親に心配をかけたくない。周囲の期待にも応えたい。それでも、「これは本当に自分が望んでいることだろうか」と迷うことはありませんか。
自分の人生を自分で決めるといっても、急に大きな決断をしたり、人の助けを断ったりする必要はありません。相手の希望と自分の希望を分け、現実の条件を確かめながら選ぶところから始められます。
この記事では、親や周囲の意見が気になって決めにくいときに、自分の気持ちを整理する方法と、伝える言葉の例を紹介します。
自分で決めることと、一人で抱えることは違う
心理学の自己決定理論では、自分の意思で選んでいる感覚を指す「自律性」と、他者に頼らず行動することは区別されています。人に頼る場合にも、自分が納得してそうしているかを考えられる、という見方です。出典:DeciとRyanによる自己決定理論の解説論文(PDF・著者公開版)
助言を聞くことも、家族の希望と同じ道を選ぶことも、それだけで「自分の人生を生きていない」ことにはなりません。大切なのは、相手の意見を聞いたうえで、自分が納得している点と迷っている点を確かめることです。
また、収入、住まい、仕事の役割、家族の事情など、自分だけでは変えにくい条件もあります。選択肢が限られていることを、意思の弱さと決めつける必要はありません。
親や周囲の期待と、自分の希望を分けて書く
「自分はどうしたいのか分からない」ときは、人生全体の答えを探すより、最近迷った場面を取り上げてみましょう。次の項目は、考えを整理するためのメモです。性格を判定するものではありません。
- 相手が実際に言ったこと:言われた言葉と、「こう思われそう」という自分の予想を分ける。
- 自分が望んでいること:賛成している部分、気が進まない部分、まだ分からない部分を書く。
- 確認や調整が必要なこと:費用、時間、すでにした約束、他の人への影響を確かめる。
- 今できること:質問する、返答を待ってもらう、情報を集めるなど、無理のない行動を選ぶ。
「がっかりさせたくない」と「自分もやりたい」が両方あっても構いません。どちらかを偽物と決めつけず、そのまま書いてみてください。
例:親に勧められた資格の勉強を迷っている
次は説明のための架空の例です。
相手の言葉:「将来のために、この資格を取ってみたら」と言われた。
自分の希望:仕事に役立つなら興味はある。ただ、今は休む時間も確保したい。
未確認の条件:仕事内容との関係、学習内容、費用、日程。
今すること:案内を読んで条件を確かめ、申し込みを決める前に自分の予定と比べる。
この時点で親の提案を受け入れるか拒否するかまで決めなくてもよいのです。自分が知りたいことを確かめるところから始められます。
「感謝」と「希望」を別々に伝える
支えてもらったことへの感謝と、今後の選択への希望は、分けて伝えても構いません。下の例を、自分の言葉や関係性に合わせて調整してください。
- 考える時間がほしい:「心配してくれてありがとう。今はまだ決められないので、条件を確認してから話したい」
- 自分の案も聞いてほしい:「勧めてくれた理由は分かったよ。私は別の方法も気になっているので、まず話を聞いてほしい」
- 助言はほしいが、答えを急ぎたくない:「経験を教えてもらえると助かる。聞いたうえで、自分でも考えたい」
感謝の言葉が自然に出ない関係なら、無理に入れなくて大丈夫です。「今は結論を出せません」と短く伝える方法もあります。返答の時期を約束する場合は、守れる範囲にしましょう。
伝え方を整えても、相手がすぐ納得するとは限りません。相手の賛成が得られないことと、自分の希望に価値がないことは、同じではありません。
自分で選べる部分と、相談が必要な部分を区別する
自分の希望を大切にする場合にも、他の人の時間やお金まで自由に決められるわけではありません。費用を負担してもらうなら、その条件を確認する必要があります。家族と共有している予定や、すでに引き受けた仕事なら、変更に向けた調整も必要です。
一方で、相手が怒るかもしれないという不安だけで、希望そのものを消さなくても構いません。「自分の気持ち」「相手に相談する条件」「相手の判断に委ねること」を分けて考えてみましょう。
具体的な頼み事を断る場面は、いい人をやめたいときの断り方で、職場・友人・家族への例文を紹介しています。
話し合いが難しいときは、結論を急がない
意見を伝えるたびに強く責められる、威圧されて話せないといった状況では、うまい言い方を探し続けるより、信頼できる第三者に状況を話すことを優先してもよいでしょう。相手との直接の話し合いだけが方法ではありません。
住まいや生活費の事情ですぐに行動を変えられない場合もあります。まずは利用できる支援や相談相手を調べるなど、生活を守りながら準備できる範囲を考えます。理解してもらうまで説得し続けたり、関係を続けるか絶つかを今すぐ決めたりする必要はありません。
疲れて考えられない日は、急ぎの連絡や期限を確認したうえで休み、改めて考える時点を決めても構いません。
今日は、自分の希望を言葉にするところから
私は、「人生の主人公」という言葉を、すべての結果を一人で背負う意味では使いたくありません。助けを借りながら、今の条件の中で自分の希望を確かめることも、自分の人生に関わる行動だと考えています。
複数の案をどう比べるか迷う場合は、後悔しない選択をしたいときの選択メモも使えます。
まずは「私は今、何を望んでいるのだろう」と、誰にも見せないメモに書いてみてください。「まだ分からない」「今日は休みたい」も、今の自分を確かめる言葉になります。
[…] 周囲への憧れと自分の希望を分けたいときは、自分の人生を自分で決めたいときの考え方も参考にしてください。 […]